おはようございます!加藤浩晃です。
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加藤浩晃のヘルスケアイノベーション通信 vol.085|2026年8月18日(火)
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今日は昨日8/17にロイターで報じられた、食品の巨人の話です。
この夏、GLP-1について、イーライリリーとノボの薬の競争、Amazonの参入、保険の制度と書いてきました。
今日は新しい登場人物で、Nestlé(ネスレ)が痩せ薬を使う人のための食品をAIで開発しています。
それでは、今日のニュースです。
◆Nestle looks to develop new products to serve users of weight-loss drugs(Reuters)
https://www.bnnbloomberg.ca/business/company-news/2026/08/17/nestle-looks-to-develop-new-products-to-serve-users-of-weight-loss-drugs/
◆Nestlé Health Science launches GLP-1 nutrition support platform in the U.S.(Nestlé公式)
https://www.nestle.com/media/news/health-science-glp-1-nutrition-support-platform
NestléのCTO(最高技術責任者)Stefan Palzer氏がロイターに語ったところによると、同社はAIを使って大量の臨床研究を解析し、GLP-1の利用者に合った栄養素の組み合わせを探して専用の商品を開発しています。
念頭にあるのは、急速な減量に伴う体の変化です。
ロイターが見たネスレの社内資料には、筋肉量の低下や、顔の脂肪が急に落ちる「オゼンピック顔」と呼ばれる現象が挙げられていました。
Palzer氏は「たんぱく質を届けながら筋肉の回復を刺激する組み合わせを探る」と説明しています。
すでにネスレのVital Proteinsブランドにはコラーゲンを加え、米国ではGLP-1利用者向けの栄養支援の仕組み(専用商品、栄養指導、コミュニティ)も立ち上げています。
背景には、食品業界の危機感があります。
米国のGLP-1利用者は、ボストン コンサルティング グループによると約1600万人になっています。
食欲を抑える薬がこれだけ広がると、加工食品やスナックや飲料の需要が恒久的に減るのではないかというのが投資家の懸念でした。
食品会社にとってGLP-1は、まず脅威として現れているのです。
Nestléがやっているのは、その脅威を市場に読み替えることです。
「食べる量が減った1600万人は、少ない量で必要な栄養を取り切る必要のある1600万人でもある」と言う視点です。
これはめちゃくちゃ面白いと思っているのですが、皆さんどれくらい共感してもらえていますか・・?
医師としてこの課題は本物だと思っています。
GLP-1で食事の量が減ると、カロリーだけでなく、たんぱく質やビタミンやミネラルの摂取も一緒に減ります。
何もしなければ、脂肪と一緒に筋肉も落ちます。
筋肉の減少は、特に高齢の方では転倒や衰弱につながる、放っておけない問題です。
脱水や便秘も起きやすくなります。
体重を減らすことと、健康に痩せることは別のことであり、薬が前者を担うなら、後者は栄養と運動の設計が担うことになります。
GLP-1の市場を、イーライリリー対ノボの製薬の勝負として見ると半分しか見えていないのかもしれないと、この記事を見ていて思っています!!
利用者が数千万人になるということは、その人たちの生活が変わるということです。
高タンパクの食品、筋肉維持のためのたんぱく質やサプリ、水分と電解質、便秘や吐き気への対策、体組成を測るウェアラブル、栄養指導など、薬の周りに薬を使う生活を支える経済圏が生まれます。
この夏書いてきた話を並べると、新しい医療・ヘルスケアの経済圏の輪郭が見えてきている気がしています。
Amazonは薬を届ける部分を取り、CVSは価格の透明化を取り、Ouraに出資したリリーは継続の支援を取り、そして食事をNestléが取りにきました。
大きな薬は、薬の売上だけでなく薬を使う生活様式という市場まで作ります。
これがGLP-1という現象の、本当の大きさだと思います。
そのうえで指摘の部分も紹介していくと、
ロイターの記事では、英国の栄養学者が「肉や魚や卵や豆といった普通の食品で同じたんぱく質と栄養は安く取れるのに、より高い専用商品に頼るのは残念なことだ」と批判しています。
もっともな指摘です。医師としても、基本はまず普通の食事だと思っています。
そのうえで、食が細くなって食事だけでは足りない人にとって、設計された補助の商品には役割があります。
専用商品ありきではなく、必要な人に届く形になるかがこの市場の質を決めると思います。
日本でもウゴービが保険収載され、もちろん自由診療のGLP-1もマンジャロを中心に広がっています。
利用者の栄養の課題は、日本でもこれから確実に出てきます。
そして日本には、栄養に強い食品会社と、医療用の栄養食品や保健機能食品の制度があります。
薬の周りのこの新しくつくられようとしている市場を誰が取るのか。
日本の食品会社とヘルスケア企業にとって、これは新しい事業チャンスだと思っています!!
<今日のまとめ>
NestléがGLP-1利用者向けの食品開発を進めているとロイターが報じました。
AIで臨床研究を解析し、筋肉量の低下などの副作用に合わせた栄養の組み合わせを探しています。
米国の利用者は約1600万人にもなっていて、食欲を抑える薬は食品業界の脅威でしたが、少ない量で栄養を取り切る需要という市場でもあります。
GLP-1の本当の大きさは、薬の売上ではなく、薬を使う生活様式が生む経済圏にあります。
<編集後記>
薬が食事を変え、食事が薬を支える。今日の話は、医療と食品の境界が溶けていく話でもありました。
製薬とテック企業と食品会社が、同じ患者さんを支える一つの経済圏の中で動き始めています。
こういう領域を越えた動きを、医療、政策、経営、テクノロジーの人が一緒に議論する場として、何回も言いますが、来月9月12日(土)に日本ヘルスケアイノベーション学会(JHIS)の第2回学術大会を、東京・一橋講堂で開催します!
基調講演は元厚生労働大臣の塩崎恭久先生、東京大学名誉教授の渋谷健司先生、メディカル・データ・ビジョンの中村正樹社長。教育講演は吉村健佑先生(千葉大学)の政策、小久保欣哉先生(二松学舎大学)の経営戦略とイノベーション、アイリス代表・沖山翔のAIの3本立てです。
■日本ヘルスケアイノベーション学会 第2回学術大会
・日時:2026年9月12日(土)14:00〜17:00(13:30受付開始、17:30〜希望者で懇親会)
・会場:一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
・入会と参加のお申し込みはこちら
https://forms.gle/uAgHJU2J9yVonmRw6
初年度の今回は、年会費で入会いただくと学術大会の参加費はかかりません(懇親会は別途です)。
9月の予定を立てるこの時期に、ぜひ予定へ入れてもらえたらうれしいです。
話を戻しますが、今日の新しい経済圏の話、本当に面白いと思っているので、ぜひ覚えていてほしいです!!
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
加藤浩晃
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■ 新刊のご案内
『0次予防から始まる健康国家戦略 :2040年における医療の未来予想図』(発売中!)
病気を治す医療から、病気が起こりにくい社会を設計する医療へ。2040年、そして2100年に向けた、医療の再設計の全体像を描きました。ぜひ読んでください!!お願いします!!!!
◆ https://www.amazon.co.jp/dp/4779229693/
あとこちらは、自分のための趣味(アンチエイジング、ロンジェビティ)として作った本です。
『世界最先端の研究が教える新事実 疲労回復学BEST100』(2026年7月発売)
◆ https://amzn.asia/d/0g9h4NxZ
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■ 発行人プロフィール
加藤 浩晃(かとう・ひろあき)
医師、経営者、ヘルスケアイノベーション研究者。
デジタルハリウッド大学大学院特任教授、東京科学大学医学部臨床教授、東京大学応用資本市場研究センターフェロー、アイリス株式会社共同創業者・取締役副社長CSO、日本ヘルスケアイノベーション学会理事長。一橋大学MBA、経営学・イノベーション領域の博士後期課程。元厚生労働省室長補佐。アイリス株式会社共同創業者・副社長として、日本初のAI搭載新医療機器「nodoca」の保険適用・社会実装に携わる。2017年から10年にわたりヘルスケアビジネス領域の経営者や新規事業者向けコミュニティ「ヘルスケアビジネス研究会」を主宰。著書に『医療4.0』『医療×起業』『医療と算盤』『デジタルヘルストレンド』ほか監修含め40冊以上。日本抗加齢医学専門医・評議員、日本メンズヘルス医学会理事・テストステロン治療認定医、日本美容内科学会評議員、日本眼科学会眼科専門医、日本健康経営専門医機構顧問・健康経営専門医など。
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■ 加藤浩晃のヘルスケアイノベーション通信
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とても興味深いです!
いつも有益な情報と、専門家からの視点で解説して頂き感謝です🙏🏻
食欲減退による食品の需要減という脅威を、「食べる量が減ったからこそ、少ない量で栄養をしっかり補う市場」として捉え直すネスレの着眼点にすごく納得しました。ただ薬を飲むだけでなく、急速な減量に伴う筋肉の減少や栄養不足といった生身の体の課題をAIで分析して補おうとする動きは、非常に実効性の高いビジネス展開ですね。